DRIFTING ON THE NAKAGAWA
西伊豆野良生活ツアーで洞窟巡り中に転落老人を救助&洞窟渋滞追突沈&船酔い地獄 07.5.2〜5
 「隊長、西伊豆の海はいいですよ〜」
 13号村長の誘惑のささやきと先月のシーカヤッククラブ「KAI」のみなさんとの出会いもあり、ゴールデンウイークにつっぺり隊で西伊豆野良生活ツアーを実施することとなった。村長たちが数年前から根城としている西伊豆浮島海岸に三々五々隊員たちが集結する。ワシも2日の夜11時に仕事から帰り、準備をして夜中の1時に出発。270kmを走り朝7時に着くが、何とすでに全員集合していたのだった。
 参加者は、村長、ビール艦長、ライダー秋本、コースケ、えぢそん、クラブ「KAI」のkeigoさん、夜から参加のterra隊員とワシの7名。しかし、最終日にはもう一人増えることになるのだった。
連係プレーでつっぺり救助
 浮島海岸は、堂ヶ島と土肥の中間に位置する小さな入り江の海岸であった。前日から野良っていた隊員たちは、屋根テーブル付きのベストポジションを確保し、朝飯を食べながらまったりしている。もはやすっかり野良化しており、定住者のようである。
 午前中も湾内でひとしきり遊んだ後、外海の海岸沿いの洞窟巡りにこぎ出した。昨年、ここで自作艇を真っ二つに折ったコースケ隊員は、懲りずにまたも自作艇で漕ぎ出すが、さすがに頑丈で、つっぺり隊的にはおもしろくないのだ。三浦の海がホームのkeigoさんは、初めての西伊豆と言いながらも余裕の船出である。
 田子港方面に向かいながら、セビラーで秋本隊員とタンデムの村長を先頭に、目につく洞窟に片っ端から突っ込んでいく。川下りではできない探検気分が味わえるのがよい。2、3の洞窟に突っ込み、さて、これから本格的に洞窟巡りを始めようかというときに、事件は起こった。
 海から回らないと来れない崖下に、背広姿の老人がいて、盛んに汗を拭いている。地元の人で裏道ででも降りてきたのかと思ったが、それにしてはこんな場所で背広姿は変だと、不審に思ったkeigoさんが近づいてみると、顔中血だらけで、崖を登ろうとしていたのだった。汗を拭いていると思っていたのは、血をぬぐっていたのだ。
 「事故だ」との声で、みんなが集まり、村長とkeigoさんが上陸して近づく。その老人は頭からの出血はあったが、意識はしっかりしていたので、村長が事情を聞き出す。どうやら山菜採りに来ていて、崖から海に転落したらしい。舟に乗せようとしたが、手足も怪我をしていたので、keigoさんが携帯電話で救急車を要請する。救助するには舟で海から行くしかないと、ワシとビール艦長が目印になるように沖合に出て待つ。えぢそん隊員は連絡のため海岸まで直行する。つっぺり隊ならではの連係プレーである。
 運良く、地元のダイビングスクールの船が戻ってきたので、その船に救急隊員が乗り込み、えぢそん隊員の案内で、現場に直行する。救助隊員2名がすぐさま救出に上陸し、抱きかかえるように老人を船に乗せて、海岸で待つ救急車へと向かったのだった。
  いやはや、つっぺり隊として初めての海ツアーで人命救助をするはめになろうとは、さすがはつっぺり隊としか言いようがない。しかし、その後、ちょっとばかり困ったことが起きたのだった。
 人命救助で洞窟探検気分はすっかりなくなり、海岸に戻って休んでいると、地元の役場と警察の人が事情確認に来たのだ。「代表者は誰ですか」というから、仕方なくワシが事故の概要について話したのだが、最後に、
「あなた方のチームの名前は何というんですか」
との質問に、思わず
「いやあ、ちょっと…名乗るほどのものでは…」
と言葉が詰まってしまった。
「…つっぺり隊と言います」
「…?それは?…どんな意味ですか?」
「まあ…茨城の方言で…沈没するという…」
「…ああ、なるほどね…」
お巡りさんは、笑ってお礼をのべていったが、人命救助をしたのが沈没チームでは、洒落にならないのかもしれないなあ。こういう時のために、オフィシャル用のチーム名を考えておくのもいいかもしれないが、まあ、つっぺり隊だからこそ海につっぺった老人を助けられたということで、よしとしておこう。
 昼飯後は、思い思いに時間を過ごし、歩いて数分の町営の温泉「しおさいの湯」で一風呂浴びる。料金も500円でリーズナブル。塩化ナトリウム泉でなかなかよい。
 この日の宴は、人命救助で盛り上がる。あの老人はたまたまワシらがそこで遊んでいたから助けられたが、運がなかったら誰にも見つけられなかっただろうなあと。さらに、たまたま車をビール艦長の車の隣に止めたというだけで呼び込まれた松井君が参加する。これが縁で、後に彼は隊員に引きずり込まれることになるのだが、まあ、それも運がなかったということで勘弁してあげよう。
洞窟内渋滞追突沈
 翌4日も朝から好天で、目覚めもよく、遊歩道を散歩してから、朝食に鰻丼を食す。昨夜、仲間に引き入れた単独パドラーの松井君も引き連れ、昨日に引き続いて田子方面の洞窟巡りに出発する。
 今日も手当たり次第に洞窟に突入していったのだが、たいがい少し入るとすぐ行き止まりになり、バックで戻るということの繰り返しだった。
 しかし、何個目かの洞窟に突入したところ、村長がここは違う洞窟に抜けられるというので、奥まで突き進む。
 ところが、奥に進むと、ヘッドランプを持ってこなかったので、全く何も見えない状態になり、前方の船を頼りに進むという団子渋滞になってしまう。ぐるっと左に回ったところで、前方に出口の明かりが見えたのだが、ワシの船が前に進まなくなる。どうやら舳先が突き出た岩に引っかかってしまったようなのだ。
「ちょっと待って」と向きを変えながらバックをして舳先を岩から抜こうとしたところへ、タイミングよく後ろの船が突っ込んできたので、あっという間にバランスを崩し、沈してしまった。洞窟内渋滞追突沈である。
 足が全くつかないので、船は仲間に任せて、岩づたいに出口まで泳ぎ、岩礁によじ登る。主のいなくなっ隊長艇を両脇から挟むようにして水を抜きながら隊員たちが出口まで持ってきてくれた。海では仲間がいないと大変である。感謝。  しかし、隊長自ら海で初沈をする羽目になるとは。しかも、真っ暗闇の洞窟内である。悔しさに「海の沈はしょっぱいぞ」と強がって叫ぶ姿はまるで西伊豆の猿である。
 その後は、誰も沈することもなく、田子港を目指す。湾内は波もなく、マリンブルーの澄んだ海はすばらしかった。
 砂州に上陸し、一休みしたところで、外海の灯台のある無人島を目指す。見た目以上に海はうねりがあり、しかも漕がないと進まないので結構きつい。
 島は波が打ち付けていたが、一カ所だけ水路のように岩礁が裂けているところがあり、そこから上陸する。タイドプールでしばし遊んだ後、灯台を目指す。
行きはよいよい帰りは地獄
 結構急な階段を上りきると、すばらしい眺めが待っていた。しかし、ここに来るまでによれよれになってしまった隊員が1名いた。前日夜遅くに到着したterra隊員である。連日仕事の瀬に揉まれ、今日は波に揉まれてすっかり船酔いし、海に蒔き餌をしながら、やっとここまでたどり着いたのである。
 風も出てきたので早めに帰ることになったのだが、terra隊員の疲労度を考え、田子港に戻る案もでたのだが、まっすぐ浮島海岸を目指せばそんなに距離は変わらないということで、帰りは海岸沿いではなく、外海を突っ切って戻ることになった。向かい風でなかなか進まず、うねりも大きいため、まさにterra隊員にとっては、行きはよいよい帰りは地獄になってしまった。さんざん海に吐きながら、やっと浮島海岸にたどり着いた時には、完全にテンカウントを聞いたボクサー状態になり、そのまま永眠…もとい、しばらく動けなくなってしまう。
 午後は、またそれぞれが自由に過ごしたのだが、村長と秋本隊員が大量に魚を釣ってきたので、夕食は焼き魚にする。ビール艦長は、十八番の激辛火鍋、コースケ隊員は焼き鳥とつっぺり隊らしい宴となる。
 この宴で、正式に55号無謀松隊員となった松井君。これで彼のアウトドア人生は大いに変わるであろう。  この日もマイペットのももとさくらを連れてきた村長。目に入れても痛くない可愛がりぶりである。  船酔いからやっと立ち直ったterra隊員。全て吐ききった分、野良成分をしっかりため込むことができたのでは。
 この後、それぞれ夜中から翌日にかけて帰路につき、西伊豆野良生活ツアーは幕を閉じることになるのだが、西伊豆はいつも何かが起きる。まさにハプニングの宝庫である。今後つっぺり隊には欠かせないツアーになる予感がするのだ。  
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