DRIFTING ON THE NAKAGAWA
 今年の西伊豆野良はゴールデンウイーク後半の三連休。前日からバカが浮島海岸に集まり出す。fifiダメ外人夫妻,無謀松・keigoコンビだ。続いて早朝から駆けつけたバカがゾノ父娘,村長,隊長,ゴステロ隊員。その後も,タンザニア齋藤,富山からビール艦長,埼玉からアクア秋本隊員と続々と集まる。みな,仕事の瀬を乗り越え,バカをしたくて無理矢理集まってくるのだ。西伊豆では何かが起こる。その何かを期待しているのである。そして,その何かがつっぺり隊一番の極悪人が始動したことで大いに炸裂した。
 初日の3日は,海がここ西伊豆野良では滅多に無いくらいのべた凪であった。まだ行った事が無いというゾノ隊員の要望も有り,堂ヶ島の天窓洞に出航する。本当に船がスイスイと気持ちよく進む。このままアメリカにだって行けそうなくらいだ。
 途中,三四郎島の所が,ちょうど干潮になり始めでトンボロ現象(陸繋砂州)になっており,船を下りてポーテージする。海の上でポーテージするというのもなかなか出来ない体験である。
 まだ8時前だったこともあり,天窓洞には遊覧船も来ておらず,静かな光の降り注ぐ天窓洞をつっぺり隊で独占できた。もう少し費が上から差し込む時間になると海がコバルトブルーに輝くのだが,その時間帯は遊覧船がひっきりなしにやってくるのでカヌーは追い出されてしまう。 そんな話をしながら,景色に浸っていた時に,密かにつっぺり隊随一の極悪人が密かに悪巧みを指導させていたのだ。
 天窓洞でゆっくりと景色に浸っていたゴステロ隊員のカヌーの前後をゾノ隊員と無謀松隊員がつかんで左右に揺すり始め,ひっくり返してしまったのだ。 
 ゾノ隊員の名誉のために言っておくが,彼はまっとうな人間である。ゾノ隊員は軽い冗談で揺すっただけで,もちろん沈させるつもりなど毛頭無かった。「止めろ,止めろー」というゴステロ隊員の叫びをあざ笑うかのように,留めの一捻りを加えたのはバウを握っていた無謀松隊員である。その証拠に,何度もロールで起き上がろうとするゴステロ隊員の船を自分の船の舳先で押さえて阻止し,とうとう沈脱させてしまったのだ。まさに,極悪人である。
 まさかそんなこととは露知らず,何度もロールに失敗して疲れ果て,半ばやけくそ気味に泳ぎ出すゴステロ隊員。何食わぬ顔でその脇を曳航する無謀松隊員。極悪人の面目躍如である。
 しかし,沈脱してずぶ濡れになり,やけくそ気味になったことが,ゴステロ隊員に思わぬ幸運をもたらす結果になる。村長が海底にタコを発見するのだが,ちょっと手の届く範囲では無く,みんなどれどれと囲んで覗いているだけだった。
 しかし,ゴステロ隊員はもはやずぶ濡れ。何の躊躇も無く潜ってタコを手掴みで捕まえる。「獲ったど〜!」と雄叫びを上げるゴステロ隊員。「おお,すげえ〜」と喜ぶ隊員たち。タコ獲り名人誕生の瞬間である。陸に上がって,鬱憤を晴らすようにタコの頭を石で叩いて息の根を止めるゴステロ隊員の姿には,狩猟者の喜びが満ちあふれていた。その後,タコ獲りにすっかりはまってしまった村長とゴステロ隊員は,キャンプ地の前の海岸でもタコを見つけて獲っては絶叫を繰り返すのだった…
 遅い朝食を食べ,海が穏やかなうちにもう一漕ぎしようと,田子方面の洞窟巡りに漕ぎ出す。しかし,ここでもゴステロ隊員の受難は続くのだった。
 ゴステロ隊員が洞窟から出ようとしたところで船底が浅瀬に引っかかりバランスを崩して沈してしまう。ここでも,ロールで起き上がろうとするが,今度は船体が完全に復元起き上がる寸前で浅瀬にぶつかり戻りきれずにまた沈してしまう。何度やってもだめなので,見かねたkei50隊員が自分の船につかまって起き上がらせようとするが,ますます浅瀬にはまりこみ沈を繰り返す。結局,疲れ果てたゴステロ隊員は,ここでも沈脱する羽目に。精も根も尽き果て,すっかり心が折れてしまったゴステロ隊員は,みんなが田子湾に向かおうとするが,「俺はもう行かない」と一人帰路につくのであった。
 田子湾のこーすけ浜で休憩した後,灯台のある無人島に上陸。タイドプールで泳ぐ娘たち。帰りは急に風が吹き始めて波が荒れ出したが,みな十分に満足して帰路についたのだった。昼食は,ゴステロ隊員が獲ったタコを早速調理したタコ飯。しかし,当の本人はすっかり意気消沈し,虚空を見つめるのだった。心が折れた人間は悲しい。
 午後は,泳いだり,また洞窟巡りに行ったり,読書をしたりとおのおのがやりたいことをしてまったりと過ごす。夕方,陽ちゃんも到着し,黄金の焚き火タイムで1日目終了。
 夜半にもの凄い雨と風が吹き,つっぺり隊御用達の焚き火テントが倒壊する。朝には天気も回復するが,風が収まらず,波がめちゃくちゃ高いので,この日は海に出るのをあきらめ,釣り日とする。しかし,この日の受難は隊長に訪れた。
  堂ヶ島の南の仁科港で釣りを始めたのだが,仕掛けの準備に手間取っていた隊長が,やっと準備が終わり,さあ,第一投と竿を振った途端,
「痛ててて!」と激痛に襲われる。間抜けなことに,海に針を垂れる前に自分の足の親指をきっちりと釣ってしまったのだ。思いっきり竿を振ったので,針の返しまでしっかりと食い込んでおり,ちょっとやそっとでは抜けそうもない。
同じ経験をしたことがあるという陽ちゃんが
「隊長,これは思いっきりこれで引っこ抜くしかないですよ。痛いのは一瞬だから」とペンチを取り出し,今にも抜く体勢に入る。
「待て!待ってくれ。まずは自分でやらせてくれ」と,思わず泣きを入れる隊長。
心配する村長からナイフを借り,痛みに耐えながら,針が抜けやすいように刺さっている針の周りの拡張工事を始める隊長。
「これは病院に行って抜いてもらうしかないか。」と半分あきらめかけた時,するっと針が抜けたのだった。
「よかったよー」と心底ほっとする隊長。
「しかし,そもそもサンダルで釣りをしちゃだめっしょ:」と隊員。
【教訓】釣りをするときはしっかりと靴を履きましょう。釣りをなめてはいかんぜよ。
仁科港では,全員たいした釣果がでず,キャンプ地に戻り昼食。まったりとする。
 午後になり,捲土重来を期して,今度は北側の田子港に釣りに行く。みんな念仏鯛をしこたま釣る中で,隊長がウマヅラハギを釣り上げる。この日の一番の釣果。痛い思いをした分,海の神様が幸を分けてくれたようだ。
 夕方になって,隊長の妻や無謀松隊員の友人などが訪れ,焚き火宴会が盛り上がる。どうでもいいよしなし話が延々と続く。それがキャンプの醍醐味でもある。そして,怪しい夜が更けていったのだ。
 翌朝は,渋滞を避けて早朝解散。各隊員とも三々五々帰路につく。西伊豆はいつも何かが起こる。だから素晴らしいのだ。何年たっても浮島海岸の夕日をみに来ることだろう。
極悪人始動!ゴステロ隊員の受難,タコ獲り名人誕生,隊長自釣り!西伊豆では何かが起こる!
 2016.5.3〜5.5
inserted by FC2 system