DRIFTING ON THE NAKAGAWA
不沈艦隊長号に穴が!不沈艦神話終焉か? 2002.11.1〜2
 

 今行かねば今年はもう川に行けないと、押し寄せる仕事の瀬を乗り越え、つっぺり隊は川をめざした。
今回のメンバーは隊長、副隊長、なぞちゅう、ろーたす隊員の4人。行き先は茨城県北部の久慈川。
春先のツアーで副隊長号が没をした久慈川にリベンジをすべく、没地点からのエントリーとなった。
果たして、リベンジは成ったのか?
水面に映ったキャンプ地対岸の紅葉があまりに見事なので、拡大図もつけました。他の画像もクリックすると見られるのもあります。
 まずは、隊長のもとを離れ、気田川〜那珂川と一人旅を続けている不沈艦を回収するため、一足早く7時にキャンプ地である大子と山方町の境目にある大内野橋下流の河原に到着。すぐに18号歌舞伎やす隊員も貸していた不沈艦を携えて到着。この艦は隊長よりも川に行ってるねえと笑って収納。やす隊員は子どもサッカーチーム監督として大会出場の瀬に突入するため一時退却。
 その後、他の隊員が来るまで対岸のすばらしい紅葉に見とれていると、川岸でなにやら丸太のようなものがうごめいている。最初流木かなと思ったら何とそれは遡上してきた鮭であった。
 今まさに最後の力を振り絞り尽くし、息絶えようとしている鮭をみて、「しめしめ、これで今夜の鍋は決まったな。石狩鍋だ。」とほくそ笑むが、後で地元の釣り師から、「上流まで昇りきった鮭なんて味がなくて食えんぞ。砂糖と醤油の無駄使いになるからやめとけ。」と言われ断念。


 所谷(ところや)キャンプ場下の河原からエントリーする。ここが前回副隊長艇が沈ではなく没をした地点。後でわかったのだが、ここが久慈川で一番の難所であり、カヌーで死者も出しているらしい。そんな危ない場所とは考えもせずに、いきなりそこからスタートしてしまうのも行き当たりばったり無計画を信条とするつっぺり隊らしい。
 
 今回、HIVIX(ハイビックス)というインフレータブルにファルトのフレームを取り入れたというハイブリッド艇をネットで購入し、「俺は絶対沈しない」と初めての川にもかかわらずいきなりノー沈宣言をして余裕の船出をするろーたす隊員。しかし、やっぱり久慈川の神様がその言葉を聞き逃すはずはなかったのだ。しっかりと彼のために祝福の瀬を用意しておいてくれたのだった。

 昼食をとるために、焚き火のできそうな河原に上陸。なぜ昼に焚き火かというと、いつも昼飯はコンビニで買い込んでいくのだが、「今日は冷えるだろうから煮込みうどんで暖まろうぜ。大丈夫、俺ガスバーナー持ってるから」という言葉を信じてそれしか買わなかったのがいけなかったのだ。
 下り始めたとたん、「あっ、バーナー舟に積むのわすれた。でも大丈夫。焚き火をすればいいよ。」と軽くのたまう。
 そんなに簡単に焚き火ができるのかあという不安はあったが、まあしょうがないと流木を集めてはみたものの、竃も作らずにいきなり上から枯れ葉に火を付けるやり方では木に燃え移るはずもなく、結局昼飯は断念。煮込みうどんは翌日の朝食となってしまったのだった。
 燃え上がらない流木を前に開き直って一服する昼飯断念責任者。

 昼食抜きでひもじい思いをしながらも、好天に恵まれ、のんびりとした気持ちのいい川旅が続いた。しかし、久慈川の神様はこの辺りで少し見せ場をつくらないと盛り上がらんでしょうとでもいうようにちゃんと演出まで考えてくれていたんだなあ。中程の堰を超える際にろーたす隊員にみごとな沈をする場を与えてくれたのだ。
 以下は、沈をした後の本人の弁である。 

 途中で、落ち鮎を獲るための堰が何カ所かあり、そこで地元の漁師と立ち話をする。
「あんちゃんら、寒くねえのけ。」
「寒いっす!」
こんな舟で川下って何がおもしれえんだ。」
うーむ、普通の人から見れば、こんな寒い時期にただ川を下ったって何の得にもならないとしか思えないんだろうなあ。
なぞちゅう隊員が「漁師は獲物を獲ることに価値を見出してるけど、自分たちは何も獲らないことに価値を見出してるわけだから」と講釈してたけど、まさにその通りなのだ。物質的には何も得ないけど、精神的にはものすごくたくさんのものを得られるのが川下りなんだよなあ。
 夕食は創作「久慈川鍋」にチャレンジした。素材は、地元の直販所から仕入れた次のものである。
○奥久慈しゃも
○一口こんにゃく
○舞茸
○ほうき茸
○白菜 ○ねぎ ○もめん豆腐
味付けは、ゆず味噌にキムチの素
お味はもちろん、久慈川の味がしたのである。
(本当かなあ?)

 この直後、ろーたす隊員は舟にはい上がろうとして、逆に舟を頭からかぶってしまうのであった。
 いやー、それを見ていて思わず息が詰まるほど笑わせてもらった。やっぱり他人の沈は蜜の味である。しかし、このあとまさか自分がその立場に追い込まれようとは思いもしなかった。
 ろーたす隊員の沈を参考に慎重に堰を乗り越える隊長となぞちゅう隊員。ここは背が立たないほど深いのだ。そこにろーたす隊員は飛び込んだわけね。

 前回の没経験を生かし、今回はファルトのタンデム艇に重量級の副隊長一人、インフレータブルの不沈艦隊長号に隊長となぞちゅう隊員と配船を工夫したことと、水量も多めだったこともあり、一番の難所も全員ノー沈で乗り切った。
  
 ここを乗り切ると、後は適度な瀬とのんびりした流れの繰り返しで、順調な旅が続いた。水質は極上で、泥がないためか非常に澄んでいる。あちこちで魚影が舟の上から確認できた。まだ元気に泳いでいる鮭も何度か見ることができたのには感動した。  
 見よ!この輝く雲を。
いやはやまったくしあわせ〜とはこのようなひとときをいうのであろう。
 私はHIVIXの調子がよいので久慈川をなめていましたね。はい。
我々4人が下ったコースには上小川のあたりに1か所「堰」があるのですが、その堰を越える時に(高低差1メートルくらい?)、私は堰のてっぺんに立ち、フネをつかんで、足で堰をけりながら空中でフネに飛び乗る計画をたて(イメージし)クリアしようとしたのですが、着地の際にバランスを崩して「沈」となりました。ま、経験不足ですね。カッパの下は普段着だったものですから、水は冷たいのなんの.。.しかし言い訳するようですが、気持ちはよかったです。機会があればリベンジしたいです。
」byろーたす
 この後、この沈によって彼は身も心も川下りの魅力につっぺり、夜の焚き火宴会では「川下りっていいなあ。」としみじみ繰り返し申し述べていたことも付け加えておく。久慈川の神様、あんたはエライ!
 ろーたす隊員の沈もあったし、今回のツアーも久慈川の神様のおかげで盛り上がったなあと、どんどん緩やかになる流れに乗りながら川旅の終わりを考えていたら、実は久慈川の神様が用意してくれた本当の見せ場はこの後にあったのだ。しかも、不沈を誇り、いつも川に放り込まれる敗北者を高笑いしていた自分がその当事者になるとは露ほども考えていなかった。
 浅瀬が続き、それを乗り越えた流れが左側の石垣の土手にぶつかっているところで、このまま流れに乗ってると土手にぶつかるなあと思いながらも、まあ、いつものごとく舟ごとそのまま跳ね返って何とかなるだろうと、まさに油断していたんだなあ。
 その石垣には針金のカバーがしてあったのだ。
「プシュー」という音とともに、左舷からいきなり空気が勢いよく漏れはじめ、あっという間に左のチューブがしぼんでしまった。突き出た針金に10cmほど引き裂かれてしまったのだ。
 その場は、なぞちゅう隊員と必死に漕いで、近くの河原に乗り付けたが、修理キットも持参していなかったため修理不能。穴の空いた不沈艦を見つめ、
「これは航行不能だな。曳航していくしかないかあ。ああ、敗北者ってこんな気持ちになるのかあ。」
と、まさに不沈艦神話にも終焉の時がきたのを覚悟した。
「あのプシューという音は、まさに不沈艦神話が崩れ去る音だったんだなあ。」
 しか〜し、ここからが不沈艦の本当の実力の見せ場でもあったのだ。曳航するにもロープがないし、とりあえず動かそうと川に押し出してみたら、浮力は全然落ちていない。ただ、バランスが悪いだけなのだ。「これは一人なら何とかなりそうだ。」と漕ぎ出してみたら、バランスさえうまくとれば、問題なく航行できることがわかった。生き残っている反対側のチューブに丸太乗り状態で漕いだので、スピードは出なかったが、大きな瀬がなかったことも幸いして、沈することもなく無事ゴールできたのだ。「ここまで不沈艦がすごいとは!」副隊長の感嘆のつぶやきが耳に入る。まあ、漕いでいる格好からすると、とても敗北していないとは自慢できないが、とりあえず沈をしなかったのだから、不沈艦神話は守れたということで、めでたし、めでたしなのだ。
 金砂の湯で暖まり、久慈川鍋に舌鼓を打っていると、歌舞伎やす隊員が合流。焚き火談義に話が弾んだ。この夜のメインテーマは、つっぺり隊にも一人一芸システムを導入すべきではないかということ。怪しい探検隊も東ケト会のころが一番充実していたのは、火吹きの長谷川のような芸をもつやつがいたからだという話から始まった(気がする)のだが、やすさんはギター、なぞちゅうはウクレレ、副隊長とろーたす隊員には火を吹かせるとして、隊長のワシは何をしようかと考えたとき、大学時代のコンパではカラオケなどなく手拍子で歌って踊っていたなあと思い出したのだ。
 そこで、就職1年目に披露してひんしゅくを買って以来封印していた「大黒様音頭」をなぞちゅう隊員と思い出しながら踊ってみた。
 『大きな袋を股にさげ〜、大黒様が来なされた〜。
  そーこへむーらのイモ娘〜、胸をはだけて丸裸〜
  ……(これ以上は情報モラルに反するため
  書き込めません。)』

と、相変わらず、まったく世の中のためにはならないようなよしなしごとをのたまいながら、怪しい夜は更けていったのだ。
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